あかねいろ/確率論者
初心に帰りたかった
白と黒のビジュアルが印象的な、シネマチックパズルアクションゲーム。
Nowhere Studios開発の「Monochroma」。
全10話、シンプルな横スクロールゲームの実況風遊劇場「よく見ろその色あかね色」。
ラスト以外はゲームに忠実に則らせていただき、肩肘張らずに悩むことなく動画を作ることが出来たが、それは「看る夢」に情熱を注ぎすぎたことによる反動も少なからずあった。
というのも、前作では不仲な姉妹の仲直りを描いたが、架空のキャラクターとはいえあそこまで彼女たちを追い詰めてしまうと、こちらの精神も不安定になってしまう。
そんなわけで、Monochromaを用いた遊劇場を作ると決めた時点で、今作は仲の良い姉妹の大冒険を前面に押し出すことにしてあまり不幸な身の上にはせず、伏線を張り巡らせるようなことはしないという前提を置いたのだった。
「逃げ続ける」を制作した時の初心を思い出したいという意図もあった。
シンプルな横スクロールの実況を作りたい。その思いがあったから、「看る夢」制作の時にやったようなログラインやサブテーマといった仰々しいモノは一切用意しなかった。ストーリーラインやキャラの背景もふわっとだけ決めて、あとは動画を録画しながら操作キャラクターに喋らせていくスタイルで動画を作っていった。
もちろん、自分の持ち味(だと考えている)陰鬱な空気感の創出とラストのオチへの丁寧な誘導はなくしたくなかったから、そのあたりには気を使ったつもりだ。結果、気負いすぎないことで程よい塩梅の動画が作れたのではないかと思っている。
素敵なラストの一枚絵も描いていただいたおかげで、本来なら後味の悪い結末をハッピーエンドで締めることが出来たのも嬉しかった。お名前を出すのは迷惑になるだろうから言わないけれども、この場を借りて改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
とまあこんな感じで、「あかね色」は良くも悪くも安産の動画だったので、物語制作のヒントになるようなテキスト類が一切残っていない。動画自体も3年前に完結しており、記憶がだいぶ曖昧になってしまっているから、ブログで書けることがほとんどない。これに関してはただただ、申し訳ないとしかいうほかない。
ただ、この短さで記事を終わらせてしまうのは味気ないので、「看る夢」後半から同時制作して、今もシリーズが続いている「確率論者」の話を少しだけしようと思う。
連続確率分布を説明する難しさ、説明できる立場にない現実
上でも触れたが、登場人物を追い詰めていく作業は追い詰める側のメンタルも削っていくものだ。
その苦痛から逃れるように、「看る夢」の編集作業と並行して作りはじめたのが「確率論者あかねちゃん」である。
確率・統計等の数理的手法を用いて不確定な事象を扱う数理のプロ「アクチュアリー」の資格試験(数学)やその教科書から引用して、高校数学から大学数学までの確率を楽しく学んでもらうのを目的に、現実でも起こりえる事象を題材としてボイロたちに頑張ってもらった。「看る夢」とは真逆の、ほんわかした明るい雰囲気で進行するように努め、寸劇にもオチをつけるよう努力した。
ただ、自分は数学科出身でこそあるものの、専攻は多様体論で確率論はろくに学んでいない。その筋の人が「確率論者」を見ればツッコミどころは多くあるに違いないし、特に連続確率分布周りの話なんて、あまりに雑で適当な解説に終始しているからブン殴られてもおかしくないはずだ。そもそも自分は教師でもなんでもなく、確率論を解説できる立場にすらないのが事実である。
それでも、思わずうーんと悩んでしまうような面白いテーマをあげつらって、数値計算においても可能な限り丁寧に導出の過程を示したつもりだ。キャラの掛け合いも含めて、どのパートも楽しんでもらえるのではないかと自負している。
次回は攪乱行列を使った問題を出題したいと考えてはいるが、いつ投稿できるかはまったくわからない。だが少なくともあと1回は「確率論者」を出すつもりなので、ぜひともお付き合い願いたい。
ところで急な話だが、明日新シリーズの1話目を投稿する予定である。遊劇場ではなく劇場、ゲームは一切使用しない。
前回の記事で書いたように父親となり忙しくなってしまったが、合間を縫ってトータル120分、映画尺を意識した動画構成となっている。中身はほぼ完成しているが、いろいろな事情で一か月ごとの更新予定。
久々にボイロたちと触れ合えて、ここ数か月はかなり楽しかった。
お暇な方は、どうぞよしなに、というわけだ。
そして次は、セイカさんの物語について熱く語らなくてはなるまい。いつになるかはわからないけれど。